参考文献:バドミントン
2021年6月 1日(火曜日)
足関節捻挫(足関節内返し捻挫・足関節外返し捻挫)
脛骨、腓骨、距骨で構成される遠位脛腓関節、距腿関節からなる関節で内側には三角靭帯、外側には前距腓靭帯、踵腓靭帯、前面には前脛腓靭帯、後面には後脛腓靭帯、後距腓靭帯がある。足関節捻挫の多くが内返し捻挫で前距腓靭帯損傷、踵腓靭帯損傷が多い。フットワーク時の趾線の方向、足関節、膝関節での緩衝作用、股関節外旋運動が捻挫の発生とかかわる。トップ、サイドへのステップで足関節内返し捻挫(踵腓靭帯損傷、前距腓靭帯損傷、前脛腓靭帯損傷、外側の靭帯)を起こし易く、バック、オーバーヘッド時の着地時に内側の靭帯を痛め易い。内側の靭帯は強靭である為、外返し捻挫は靭帯損傷より剥離骨折や、脛骨遠位端骨折を起こし易い。
応急処置
損傷程度にもよるが捻挫は靭帯損傷であることを理解しておく必要がある。軽度の捻挫でも放置することなく、必ず処置をすること。受傷後、数分で見る見るうちに腫れが出てくる場合は、骨折の合併を疑う。処置の基本はRICEである。背中を下にして寝かせ、バドミントンバッグ等で膝から下を少し高くし、負傷者に痛む部位を聞き、アイシングを行う。冷蔵庫等の氷の場合は直接、市販のロックアイスの場合は水を少し入れタオル等を1枚かけて、10分から15分ぐらい冷却し痛みの状態を聞く。足関節を動かすのに痛みがある場合はアイシングを続ける(10分から15分おきに確認)。腫れがなくあまり痛みがない場合は起立荷重ををし大丈夫であればテーピングを行い競技に復帰させる。腫れがある場合は基本的に腫れが引くまでアイシングを続ける。自発痛(動かさなくても痛む)が強い場合、腫れが大きい場合、足関節を全く動かせない場合、アイシングを続けても痛みが軽減しない場合は、テーピング等で足関節が動揺しない程度に押さえアイシングをしながら整形外科もしくは整骨院へ搬送する。
足関節捻挫と合併または類似症状を呈するものとしてリスフラン関節捻挫、ショパール関節捻挫、足根洞のマルアライメント、距骨骨折、腓骨遠位端剥離骨折、脛骨遠位端剥離骨折(遠位端骨折の場合は痛みの中心が関節から外れる)等。骨端線が閉鎖していない小中学生は、骨端線離開が合併することがあるので、関節だけにとらわれず、周辺の痛みも確認すること。
競技終了後もしくは練習終了後、関節を動かして痛みがある場合は、アイシングを行う。テーピング等を巻いた場合は、巻き直しをすること。痛みの程度によるが、帰宅後もアイシングを続けること。翌日に練習や試合がある場合は、翌朝までアイシングを行う。応急処置はどれだけやっても応急処置であるので、全く動いても荷重しても痛みがなくなれば別だが、軽傷でも必ず医療機関を受診すること。
競技復帰
競技復帰は主治医の指示に従うことが原則です。損傷の程度、損傷部位、運動強度、競技レベル、初期処置(応急処置)、負傷後3日間の処置、負傷後1週間の処置により運動復帰までの時間が大きく左右されます。
下記はあくまで目安ですので個体差があることを念頭に置いてください。①はストレッチ等の軽運動開始時期、②は足を使わない上半身の運動開始時期、③は足を含めた運動開始時期です。ただし③は運動負荷が軽いものから始めます。負傷当日を1日目として記載します。軽度の捻挫は腫れがある場合、微断裂及び部分断裂、中等度は部分断裂+完全断裂、重度は完全断裂です。
1.負傷後すぐにアイシングと固定等適切な処置を行った場合
軽度の捻挫 :①当日 ②翌日 ③3日
中等度の捻挫:①翌日 ②3日目 ③3日~7日
重度の捻挫 :①7日 ②10日~14日 ③21日~28日(競技復帰まで2~3か月)
*固定やテーピング等をした状態での運動開始時期です。治癒の日数ではありません。
2.負傷後24時間放置し翌日から適切な処置を行った場合
軽度の捻挫 :①3日 ②5日 ③7日
中等度の捻挫:①5日 ②7日 ③14日
重度の捻挫 :①7日 ②21日 ③28日~35日(競技復帰まで3~6か月)
3.負傷後数日放置または自宅での湿布後適切な処置を行った場合
軽度の捻挫 :①処置翌日 ②腫脹消退後 ③しゃがんで痛みがなくなったら(2週間ぐらい)
(捻挫を起こし易くなります)
中等度の捻挫:①処置後3日 ②腫脹消退後 ③しゃがんで痛みがなくなったら(3~4週間ぐらい)
(関節がルーズになります)
重度の捻挫 :①腫脹消退後 ②着地荷重可能後 ③しゃがんで痛みがなくなったら(3~6か月ぐらい)
(保存療法では時間がかかり関節がかなりルーズになる可能性が高いので観血療法(手術)を検討する)
上記はアスリート(競技選手)で運動強度、レベルは上級の場合です。正確な検査データではなく経験値です。重度で数日放置する症例は少なく(数例)ほとんどが1~数か月経過で来院され観血療法適応となります。以上の事から重度の捻挫に比し骨折のほうが軽傷であることが理解できると思います。あらゆる方向へダッシュ&ストップを繰り返すバドミントンにとって足関節の可動域と安定性は競技力に大きな影響を及ぼします。
負傷後は運動機能を低下させないようにストレッチをとイメージトレーニングを行います。上半身の運動を許可されたら腹筋強化と座位でのラケット振りでストロークの矯正や強化を行います。特に前腕の回内回外運動の強化をしましょう。
1)ストレッチ スタティックストレッチを行います。一般的にストレッチと言われて行われているストレッチです。座位または臥位(寝て)で全身行います。 ☞ ストレッチ 準備中
2)イメージトレーニング 自分の不得意なストロークを気持ちよく打つ、ラリーを継続する、戦略を立てイメージする等言葉ではなく映像でイメージが反射的に浮かぶようにします。過去の試合でまずかった所などもイメージで修正します。監督、コーチ等からアドバイスをもらいトレーニングしよう。
3)腹筋トレーニング 通常の起き上がり腹筋で患肢(捻挫した足)を健側(捻挫してない方)にあげて行います。また、両下肢を浮かせて行います。次に捻りを入れながら行います。最後に躯幹を完全伸展しないで行います。
4)ラケットワーク 足を伸ばし開いて座ります。オーバーヘッド、ラウンド、ハイバック、サイドアーム、胸元から、利き手反対側の肩からなどインパクト(試合)をイメージしてスイングの音がするように振ります。回内回外筋の強化は1㎏のダンベルを持ち肩下垂、肘関節90度屈曲位で行います。回内回外を意識して行い中間位で必ず止めましょう。
足を使えるようになったら走行、ダッシュ&スロー、ダッシュ&ストップ、フットワークと徐々に運動強度を上げていきます。主治医に相談しながら禁止事項を守り負荷をかけていきます。監督、コーチとメニューの相談をし早期競技復帰へ努力してください。
予防
足関節捻挫の発生は冒頭に記載の通りです。大腿(もも)の上り、足関節の背屈力低下、大腿の外旋力と内転筋力のアンバランス、荷重の加速度とつま先の方向、重心の位置等を改善することで足関節の捻挫は予防できます。大腿の上りについては大腿四頭筋、腸腰筋の筋力トレーニングを行います。大腿四頭筋についてはどのチームも行っていますね。腸腰筋は第12胸椎と第1~第4腰椎及びその間の椎間板から起こる大腰筋浅部と第1~第5腰椎肋骨突起から起こる大腰筋深部が腸骨筋と合して腸骨筋膜に包まれ腸腰筋として小転子に付きます。機能は背臥位からの上半身の起き上がり、下半身の起き上がり、躯幹の側屈です。
足関節の背屈力低下については前脛骨筋の筋力トレーニングを行います。下腿部外側の筋です。足関節を背屈(休脚時)させるとともに下腿を足背に近づけます(立脚時)。まさにレシーブの構えですね。☞ 前脛骨筋の強化 準備中 大腿の外旋筋(股関節外旋)と内転筋(股関節内転)は立位で膝を外側に向ける筋と脚を閉める筋です。開脚時の安定と、移動時の加速度の伝達方向を調整します。捻挫を起こす場合、大腿軸の方向に体重がかかり同じ方向に重心の移動と加速がつきます。
大腿軸と下腿軸が一致しその線上につま先が来て重心がその外に出なければ捻挫は起こしません。トップ、サイド、バック、そして着地でも同じことが言えます。簡単に言うと、つま先の方向と大腿軸、下腿軸が同じ方向を向いていればよいことになります。フットワーク練習で早く動こうとして着地を戻り動作で行うと高い頻度で捻挫を起こします。早く戻る為には重心のコントロールを重視(遊脚に)しましょう。
同時に予防できる外傷・傷害
腓骨遠位端骨折、腓骨遠位端剥離骨折、脛骨遠位端骨折、脛骨遠位端剥離骨折、膝関節捻挫(内側側副靭帯損傷、外側側副靭帯損傷、前十字靭帯損傷、後十字靭帯損傷、半月板損傷)、股関節捻挫。
関連記事
参考文献:バドミントン
2021年6月 1日(火曜日)
参考文献:膝周りの痛み
2021年6月 1日(火曜日)
ランナーズニー
2021年6月 1日(火曜日)
ジャンパーズニー
2021年6月 1日(火曜日)
腸脛靭帯摩擦症候群(腸脛靭帯炎)
2021年6月 1日(火曜日)